「ミュージシャンはうまい店を知っている」
という都市伝説(?)を聞いたことがある。
これはあながちうそではないかもしれない・・・
地方はもちろん、打ち上げ会場などをブッキングしてくれる事務所、メーカー
プロモーターなどはその幾度とない経験の中、より良い店を把握していくわけで、
連れて行かれる側のミュージシャンも知識は増え、舌は肥え、更においしい店を求めていく。
その循環に乗じるように、今度はミュージシャン同士の口コミもどんどんと広がってゆくサイクル。
こういった相乗効果を考えると、ミュージシャンはうまい店を知っているというのも納得できる。
この事実に直面したのは夢見る大学生の時。当時学校が終わってバイトが
ない日は、横浜の親しい仲間とのセッションに明け暮れては、色んなお店に連れて
いってもらっていた。そんななかでひときわ印象的だった店のひとつが駒沢の
「かっぱ」。
小さなカウンターのみの薄暗い店内、メニューは牛煮込みとご飯とおしんこと茶漬けのみ。
大通り沿いにあるわけでもない路地には長い行列ができ、マスコミシャットアウトという
のがうなずける殺伐とした空気感のカウンター席に座ると、突然皿からあふれる
ほど盛られた煮込みがぶっきらぼうに置かれる。普通、最初は水がくる
はずだろうと思っている学生には、かなりのカルチャーショック。
皿が浅すぎて、置かれる時に毎回テーブルにこぼれる。
これは誰に聞いても、この店の「鉄板」らしいw
内心戸惑っているところを店のおばちゃんは「ご飯は?」と聞いてくる。
「あ、じゃあ普通で・・・」と答える。
まわりを見渡すと、常連風の客ばかり、黙々と煮込みとご飯をつついている。
座っている自分のすぐ後ろには客がひしめき、席が空くのを黙って待っているのだ。
この雰囲気の中に完全に飲まれつつも、目の前に置かれた煮込みを食う。
B級グルメ的な懐かしい味、うまいっす。たまに思い出して食いたくなる。
煮込み450円
ご飯(並)200円
・・・今日はスタジオの帰りに、ドラマーの白根を連れて
「かっぱ」に行った。
数年ぶりに来た
「かっぱ」は内装がきれいになっていて、以前のような殺伐とした
雰囲気は影を潜めていた。しかし水のかわりに置かれる煮込みの味は当時から
なにもかわっていなかった。テーブルにこぼれるところも含めて。
駒沢にきたら探してみてください。